「自宅の住所を使わずに開業したい」
「初期費用を抑えて個人で事業を開始したい」
バーチャルオフィスの利用を前向きに検討しているかと思います。
実際、バーチャルオフィスを使うことで住所利用、初期費用を抑えることができます。
本記事では、バーチャルオフィスを利用して事業をスタートさせる個人へ向けてバーチャルオフィス契約~事業開始までの流れをご紹介します。
事業を開始するまでにどのくらいの期間を要するのか、何が必要なのか、書類をどう書けばいいのか
これらの疑問にお答えします。
・バーチャルオフィスの契約(1〜3日)
・開業届の作成(即日〜1日)
・開業届の提出(即日〜数日)
・開業完了、事業スタート
早ければ1週間で開業できます


【1〜3日】バーチャルオフィス契約(手順と必要書類)
バーチャルオフィスの契約は、ほとんどのサービスがオンラインで完結する仕組みになっています。自宅にいながら契約手続きを進められるのが魅力です。以下では初心者にもわかりやすく、具体的な契約手順と必要書類を解説します。
基本的な流れ

- 利用したいバーチャルオフィスの公式サイトにアクセス
- 「お申し込み」や「無料相談」などのボタンから、申し込みフォームへ進む
- 名前、住所、電話番号、事業内容などの情報をフォームに入力
- 本人確認書類などをアップロード
- 早ければ当日〜1営業日以内に審査が完了し、利用開始
一部のサービスでは、ビデオ通話での本人確認を求められることもあります。操作に不安がある場合は、メールや電話で事前に問い合わせておくと安心です。
契約に必要な書類
<本人確認書類>
運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど、顔写真付きの身分証明書が一般的です。
<補助書類>
公共料金の請求書、住民票、保険証のコピーなど、現住所が確認できる書類が必要になることがあります。
<事業に関する書類や説明>
事業の概要や使用目的などを簡単に記載した書類が求められる場合があります。とくに、契約住所を開業届や法人登記に利用する予定がある場合は、事業の具体性を説明できる内容があるとスムーズです。
スムーズに契約を進めるためには、あらかじめこれらの書類を準備しておくことが重要です。書類の不備があると審査に時間がかかってしまうため、各バーチャルオフィスが提示している「必要書類一覧」をよく確認しましょう。
・商用利用が可能か
・郵便物転送サービスの有無
・電話転送や電話対応サービスがあるか
・費用(月額1,000円〜5,000円が相場)
・信頼性・実績のある運営会社か
契約手順と必要書類はここまで

続いて、事業を開始するために必要な開業届の書き方についてご紹介します。
【即日〜1日】開業届を作成する
開業届とは、個人事業主として事業を開始したことを税務署に報告する書類のことです。正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」。この届出書を出すことで、個人事業主として活動できるようになります。
開業届の作成方法は2パターン。①PDFを印刷して手書きで記入する方法②オンラインの無料ツール(例:開業freee)を使って作成する方法があります。
開業届の様式は国税庁の公式サイトからダウンロードできます(記入は2枚、提出用と控用)。
ダウンロードは国税庁HPから

・納税地
・氏名
・生年月日、性別
・屋号(任意)
・職業、事業の概要
・開業日
・青色申告の届け出の有無
納税地

開業届の住所記入欄は2つ、「納税地」「上記以外の住所地・事業所等」。
自宅の家賃とバーチャルオフィスでかかる費用を経費計上したい方は、両方の住所を記入しましょう。2つの記入欄に重複しないように自宅住所とバーチャルオフィスの住所を記入します。
納税地は、普段仕事をしている場所がいいでしょう。その理由は税務調査が原則的に納税地で行われるからです。
納税地→「自宅の住所(住所地にチェック)」
納税地以外の住所地・事業所→「バーチャルオフィスの住所」
住所地 | 居所地(きょしょち) | 事業所等 | |
定義 | ・住民票がある場所 ・生活の本拠、拠点とされる住所 ・法律上の「住所」として最も正式なもの | 住民票はないが、実際に生活、滞在している場所 | 住所地とは別に事業を行っている場所 |
具体例 | 住民票を登録している自宅 | 別荘や海外に住んでいる | ・店舗 ・バーチャルオフィス ・倉庫や作業場 など |
参考:消費税のあらまし|国税庁
税務署からの郵便物を自宅ではなく、バーチャルオフィスへ送ってほしい方は「納税地」にバーチャルオフィス住所を書きましょう。
納税地の変更は開業届を提出した後でも可能です。手続き方法と届出書は、国税庁[手続名]所得税・消費税の納税地の変更に関する届出手続で確認・ダウンロードできます。
氏名・生年月日・個人番号

本人情報を正しく記載します。マイナンバー(個人番号)も忘れずに記載しましょう。
個人番号は、マイナンバーカード・住民票(個人番号写し)・個人番号通知書で確認できます。
手っ取り早い方法としては個人番号通知書がいいですが、手元にない場合は住民票を発行するといいでしょう。
請求方法は、市役所の窓口もしくは郵送があります。必要書類や個人番号が記載された住民票の発行方法は、住まいの市区町村のホームページで確認しましょう。
職業


職業欄には実際に行う事業の内容に応じた職業名を記入します。
職業 | 事業の概要 | |
Webサイト運営者 | Webサイト運営業 | アフィリエイトサイトの運営、記事執筆および広告収入の獲得 |
動画編集者 | 映像編集業 | YouTubeやSNS用の動画編集、テロップ・カット編集等の請負業務 |
YouTuber | 映像制作業 | YouTube動画の企画・撮影・編集・公開、広告収入の獲得 |
ゲーム実況者 | 映像配信業 | ゲーム実況動画の配信および広告収益・投げ銭による収入の獲得 |
ゲーム配信者 | ライブ配信業 | YouTube・Twitchなどでのゲーム配信活動、広告収入・視聴者支援金の受領 |
ライバー | ライブ配信業 | ライブ配信アプリを活用したパフォーマンス配信と報酬・投げ銭の獲得 |
Webライター | ライター業 | Webメディアへの記事執筆、SEOライティング、取材・編集業務の受託 |
プログラマー | プログラマー | Webアプリ・業務システムの開発、プログラムの受託制作 |
システムエンジニア | システムエンジニア | システム設計・開発・運用保守の業務請負、技術支援 |
ネットショップ経営者 | 小売業 | 自社ECサイト・フリマアプリ等を通じた商品の販売および発送業務 |
出張ビジネス(例:出張マッサージ、出張ネイルなど) | 出張サービス業 | 顧客の自宅等に訪問して提供するマッサージ/ネイル等の施術サービス |
コンサルタント、講師 | コンサルタント業 または 講師業 | 中小企業向け経営支援/個人向けセミナー・講座の企画と実施 |
屋号

屋号とは、個人事業主が事業で使用する名称のことをいいます。
例えば、「〇〇カフェ」「○○商店」「〇〇サロン」など
・事業用口座の開設
・領収書
・請求書
・契約書
・名刺 など
もちろん、屋号を持たずに個人名で事業を営むこともできます。あくまで屋号は任意であるため無理に決める必要はありません。
開業届を提出した後でも再提出すれば屋号を持つことができます。
開業日

開業日は、「事業を開始した日」を設定します。原則として開業届提出日の1ヶ月以内とすることが望ましいです。
青色申告の有無
青色申告を選択することで、最大65万円の控除が受けられるほか、赤字を3年間繰り越せるなどの節税メリットがあります。開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告の適用を受けられます。
申請書を提出しなければ自動的に白色申告となり、これらの特典は受けられません。記入欄では「有」にチェックを入れるだけですが、必ず別紙の「青色申告承認申請書」も添付・提出することを忘れずに。
書類の提出期限は原則として、開業日から2か月以内です。これを過ぎると青色申告を利用できなくなるため、早めの提出をおすすめします。
参考:青色申告特別控除|国税庁
最終チェック

【即日〜数日】開業届の提出方法(2パターン)
開業届が完成したら、所轄の税務署に提出します。提出方法は主に2つ。
① 窓口提出
税務署へ直接持参し、提出します。受付印を押した控えがその場でもらえるので、スピーディーで確実です。
②郵送提出
必要書類を郵送で提出する方法です。
・提出用の書類1部
・控え用の書類1部(返信用)
・返信用封筒(自分の住所を書き、切手を貼る)
数日〜1週間で控えが返送されます。
提出先は「納税地の所轄税務署」
バーチャルオフィスの住所を納税地とした場合、その地域を管轄する税務署に提出する必要があります。国税庁の「税務署の所在地」検索ページで確認しましょう。
バーチャルオフィスを利用して開業する際の注意点
バーチャルオフィスを活用することで手軽に開業できますが、注意しておきたいポイントもいくつかあります。
バーチャルオフィスの住所を使えないサービスがある
一部の金融機関やネットサービスでは、バーチャルオフィスの住所を使用できないケースがあります。特に、Googleビジネスプロフィールや一部のECサイトでは登録が拒否されることもあるため、事前確認が必要です。
税務署からの確認や指摘が入る可能性
バーチャルオフィスを納税地とする場合、税務署から本人確認書類や賃貸契約書の提示を求められることがあります。必要に応じて書類を用意しておきましょう。
郵送物の受け取りタイミングに注意
バーチャルオフィスでは、郵便物の受取や転送サービスが提供されています。郵便物は週に1回や月に数回の頻度でまとめて転送される場合が多いため、急ぎの通知などに対応しにくい点があります。重要な書類が届く時期には、転送日を確認するなどの工夫が必要です。
契約~開業までおよそ1週間
今回の記事では、バーチャルオフィスの契約・開業届の作成および提出についてご紹介しました。
バーチャルオフィスを使えば、自宅住所を公開することなくスマートに事業を始めることができます。
バーチャルオフィスの契約~事業開始までに揃える書類が多いため準備が大変です。しかし、事業を開始するためには重要なものなのできちんと準備しましょう。
最後にまとめ

<バーチャルオフィス契約までの基本的な流れ>
①利用するバーチャルオフィスの公式サイトにアクセス
②申し込みフォームへ進む
③本人情報を入力、本人確認書類をアップロード
④審査完了後に利用開始
<開業届の作成方法2つ>
①PDFを印刷して手書きで記入する方法
②オンラインの無料ツールを使う
<開業届に記載する主な内容>
・納税地
・氏名
・生年月日、性別
・屋号(任意)
・職業、事業の概要
・開業日
・青色申告の届け出の有無
<開業届の提出方法2つ>
①税務署窓口で提出
②郵送提出